仕事始め式あいさつ



コロナなどがあって、ここのところしばらく、新年のご挨拶をしないできましたけれども、1年のスタートですから、何かお話をしなければと思って今日はまいりました。

今、私立学校法の改正がテーマになっていますけれども、その点について、キャリアの公務員の人とも少し話したんですが、日本は例外を基準にして法改正をする。大多数の学校は問題なく行われているのに、たまたま、極めて少ない例外を基準にして、制度を改正しようとするわけであります。それが正しいかどうか。例えば、自動車は「走る凶器」だといわれていますけれど、たくさんの人が毎年交通事故で死んでいる。そうすると、自動車を運転することを犯罪として、道路交通法を改正しようとするだろうか。例えば、包丁で人を刺し殺したという事件が発生した場合に、包丁の所持を一切禁止するというような制度改革をするのだろうかという疑問が起きるわけです。そのキャリアの公務員の方は、役所の持っている、非常に古い、最も問題な体質だということを言っていました。

実は、文科省と大学との関係について考えてみるに、これまで、規制の連続だったんです。もっともっと広く考えてみると、1980年代に、「司法制度改革会議」というのができまして、教育界だけでなく、裁判所や司法制度だって規制を排除するという対象になるんだということで、聖域なき改革が行われました。

当時、大学は全国で四百数十校しかなかった。規制緩和ということで、ある程度自由に大学が作れるようになって、八百近い大学ができています。そうすると、変な大学も出てくる。そして、国が監督するということで、認証評価制度ができた。果たして、そんなことをしなければ、大学は生き残れないものだろうかと思うわけであります。

ちなみに、非常にレベルの高い大学がたくさんあるアメリカでは、文科省に該当する省庁は存在しません。確かに連邦に教育省がありますけれど、これは大統領の単なる教育に関する諮問機関と考えていいと思います。

市場がチェックする。一定の限度を超えた、社会的に許されない行為があった場合には、司法が出てきてチェックをいたします。こうして、世界のベスト20の大学の中で、実にアメリカから7割の大学が入っています。そして、その全部と言っていいほど私立大学です。

日本は規制が多い。例えば、家を建てる場合でも、事前に建築課に設計図を持って行って、「建築確認」という名称の許可を受ける認証制度が採用されている。自由に家が作れない国なんて、日本ぐらいしかありません。そして、税金も高い重税国家です。個人が法人化して、その利益に法人税が課せられて、50パーセント近い税金が取られる。配当すれば2割の税金が課せられる。その残ったお金で家を買えば、不動産取得税。持っていれば保有税、固定資産税ですね。それから最後に相続税が取られて、ほとんど税金で取られてしまうような制度です。これに間接税が加わっている。

役所というところは、できれば許認可制度を採用して、自分の職域を増やそうとするわけです。行政の肥大化現象ですね。果たして、それで国民が幸せになるだろうかということは考えてみなければいけないと思います。

今、我が学園では、昨年からいろいろな改革が行われています。高等学校では若い幹部が生まれ、若い教職員を中心にかなりの改革が行われています。看護福祉大学では、福祉学科が「医療福祉学科」に変更になり、志願者を増やしてきております。法学部でも、新しい学科、コースを作る、そういうことで生みの苦しみをしております。

私たちは、社会が変わるときに、私たちも変わっていなければいけないと思います。

チャールズ・ダーウィンが進化論の中で言ったように、36億年前に単細胞で生まれた生命が、魚、両生類、そして、爬虫類、哺乳類と変化して今日に至ってきているわけです。チャールズ・ダーウィンが言いたかったこと、それは、優れたもの、強いもの、賢いものが生き残るのではなく、変化できる、変われるものが生き残っていく、そういうことを言いたかったのだと思います。

今、激動の社会の中にあって、特に少子化問題という国を滅ぼしかねない大変な問題を抱えております。私たちも、一人一人が経営者の目で学校を考えていかなければいけないのではと思います。

新しい気持ちで今年も乗り切っていきたいと思っております。皆さんのご助力をよろしくお願いいたします。

 

令和4年1月6日(木)
学校法人ノースアジア大学 理事長  小泉 健